Webサイト改善は、計測設定を点検する→現状を数値で把握する→課題ごとに仮説を立てて優先順位をつける→1施策ずつ実行する→仮説に直結する指標で効果を測る→結果を次のサイクルに反映する、の順で進めます。リソースが限られたBtoB企業なら、このサイクルを月1回のペースで続ける形が現実的です。「見た目を変える」ことと「成果を改善する」ことは別の作業で、後者にはデータの裏付けが欠かせません。

「去年リニューアルしたばかりなのに、問い合わせがむしろ減ったんです」

サイト改善の相談で、こうした声は珍しくありません。デザインを今風に刷新し、スマホ対応も済ませ、写真も撮り直した。それでも成果が落ちるケースでは、GAを確認すると、デザイン変更でCTAボタンの位置が変わり、製品ページから問い合わせフォームへの遷移が細っていた、という構図がよく見つかります。

見た目は良くなっても、ユーザーが問い合わせにたどり着く道筋が崩れていれば成果は落ちます。この記事では、データを起点にサイト改善を進める手順を、各段階で見る数字とセットで解説します。

直感的な改善がうまくいかない理由

サイト改善の現場でよくあるのが、担当者やデザイナーの直感でいきなり施策を実行するパターンです。「このボタン、色が地味だから赤にしよう」「フォームが長いから項目を減らそう」。判断そのものが間違いとは限りませんが、データを見ずに進めると判断を誤りやすくなります。

たとえば「料金ページを見てから離脱する人が多いので、料金表を隠した方がよいのでは」という提案が営業側から出たとします。直感的には理解できる話です。ただ、ファネルを分けて見ると、料金ページを閲覧したユーザーの方が問い合わせ到達率が高い、という結果になることも十分あり得ます。比較検討の段階にいるユーザーほど料金を確認するからです。その場合、料金表を隠せばCVの後押しを自ら外すことになります。

直感的な改善が危ういのは、間違いに気づくのが遅いことです。計測していなければ効果を測れず、「なんとなく良くなった気がする」で終わります。これが続くと改善活動への社内の信頼が失われ、予算も削られるという悪循環に陥ります。

改善の起点は現状の数値化

まず計測環境を点検する

改善の第一歩は施策ではなく、計測です。

GAを入れているのに、正しくデータが取れていない状態で改善の議論をしている企業は意外と多いです。キーイベント設定(CV設定)が漏れている、GTMのタグが発火していない、社内アクセスが除外されていない。こうした問題が放置されたままでは、「CVRが低い」と言われても、その数字自体が正しいか判断できません。

計測環境で確認したい項目は次のとおりです。

  • キーイベントの設定:問い合わせ完了、資料DL完了など、ビジネスのゴールに直結するアクションが設定されているか
  • 内部トラフィックの除外:自社や制作会社のアクセスがデータに混ざっていないか
  • データ保持期間:探索レポートで使うユーザー単位・イベント単位のデータは2か月か14か月から選べます(標準プロパティの最長は14か月)。前年比較をするなら14か月にしておくのが望ましいです
  • クロスドメイン設定:フォームが別ドメインにある場合、セッションが途切れていないか
  • GTMの動作確認:プレビューモードで各イベントが意図どおりに発火するか

GAの設定手順は「GAでCVRを分析する方法|コンバージョン設定から改善まで」で詳しく解説しています。直帰率・離脱率の定義が曖昧なまま数字を比べてしまうケースも多いので、「直帰率と離脱率の違い|GA4での見方と改善の判断基準」もあわせて確認しておくと安心です。

改善前の健康診断で現状を把握する

計測環境が整ったら、サイトの現状把握に移ります。ここではまだ「何を直すか」は考えず、「今、何が起きているか」を数値で押さえることに集中します。

GAで見る指標

指標確認の意図
流入チャネル別のセッション数・CVRどこから来たユーザーが成果につながっているか
ランディングページ別の直帰率入口で離脱しているページがないか
デバイス別のCVRモバイルとPCで体験に差がないか
ページ遷移パス(探索レポート)ユーザーがどの順番でページを見ているか

ヒートマップで見る指標

指標確認の意図
スクロール深度ページのどこまで読まれているか
クリックマップどこが押されていて、どこが押されていないか
アテンションマップページのどの部分で滞在時間が長いか

ヒートマップはMicrosoft Clarityなら無料で使えます。GAでは見えない「ページ上の行動」を補えるので、併用が望ましいです。見方は「ヒートマップ分析の見方と活用法」、GAとヒートマップを組み合わせた行動分析の手順は「ユーザー行動分析でわかるサイト改善のヒント」にまとめています。

この段階で大切なのは、発見を数字で記録することです。「モバイルの数字が悪い気がする」ではなく、「モバイルのCVRはPCの何分の1か」「モバイルの直帰率はPCより何ポイント高いか」まで書き留めます。数字が具体的であるほど、次の優先順位づけがしやすくなります。

PDCAのP:仮説を立てて優先順位をつける

課題と仮説を分ける

データを見ると、いくつかの問題点が浮かんできます。ここで「見つけたからすぐ直そう」となるのが、改善が空回りする典型パターンです。

たとえば「モバイルのCVRがPCの5分の1しかない」。これは課題です。なぜ低いのかについては、複数の仮説が考えられます。

  • フォームがモバイルに最適化されておらず、入力に手間がかかるのではないか
  • CTAボタンがファーストビューに入っていないのではないか
  • 読み込みが遅く、内容を見る前に離脱しているのではないか

課題は1つでも、仮説は複数あり得ます。どの仮説が正しいかで、打つべき施策はまったく変わります。ここをデータで見極めるのが、直感型との最大の違いです。

読み込み速度はGoogleのPageSpeed Insightsで確認できます。Googleは、LCP(Largest Contentful Paint)が2.5秒以内であれば「良好」としています。モバイルでこれを大きく超えているなら、速度改善を優先候補に入れる価値があります。具体的な手順は「サイト表示速度の改善方法|Core Web Vitals対策ガイド」で解説しています。

インパクト×実装難易度で優先順位を決める

仮説が出そろったら、全部を同時にやろうとしないことが大切です。使うのはシンプルな2軸マトリクスです。

実装が簡単実装が難しい
インパクト大最優先(すぐやる)計画的に実施
インパクト小手が空いたときにやらない

インパクトは「影響を受けるトラフィック量×CVRの改善幅」で見積もります。たとえば月間5,000セッションのページでCVRが0.5ポイント上がれば月25件のCV増ですが、月間200セッションのページなら同じ改善幅でも月1件です。実装難易度は「テキスト修正だけで済むか」「デザイン変更が必要か」「開発が必要か」で大まかに分けます。

健康診断で次のような課題が並んだケースで考えてみます(数値は説明用の例です)。

  • サービスページの直帰率が70%前後と高い
  • 問い合わせフォームの入力完了率が30%前後と低い
  • ブログからサービスページへの遷移率が2%台にとどまる
  • モバイルのCVRがPCの3分の1程度
  • 料金ページの平均滞在時間が10秒台と短い

この中で最初に着手する候補になりやすいのは、フォームです。フォームに到達したユーザーは問い合わせ意欲の高い層で、そこでの離脱を減らす効果がCV数に直結します。しかも入力項目の整理やエラー表示の改善で済むことが多く、実装も重くありません。フォーム改善の具体策は「フォーム最適化(EFO)でCVRを改善」にまとめています。

正直なところ、優先順位づけで一番難しいのは「やらない」を決めることです。インパクトが小さく実装も重い施策は、社内で声が大きくても後回しにする判断が必要になります。

PDCAのD:施策を1つずつ実行する

同時に複数変えると知見が残らない

複数の施策を一度に実装すると、結果が良くても悪くても「何が効いたのか」がわからなくなります。

たとえば「CTAの色変更」「フォーム項目の削減」「ファーストビューのコピー差し替え」を同時にリリースしてCVRが上がったとします。CTAの色だけで効果があったなら、フォーム項目の削減は不要だったかもしれません(むしろリードの質が下がるリスクもあります)。これがわからないと、次の改善に知見が積み上がりません。

とはいえ、完全に分離できないこともあります。その場合は「大きな変更は1つだけ」にして、付随する小さな調整は記録しておきます。何を変えたかが明確であれば、結果の解釈はある程度可能です。

A/BテストとBefore/Afterの使い分け

可能であれば、施策はA/Bテストで検証するのが理想です。ただしA/Bテストで差を判定するには、元のCVRや見込む改善幅に応じた十分なサンプル数が必要です。トラフィックが限られるBtoBサイトでは、判定までに長い期間がかかるページも出てきます。

アクセスが多いページはA/Bテスト、少ないページは期間を区切ったBefore/After比較、と使い分けるのが実務的です。Before/After比較は季節や広告出稿量の影響を受けるので、比較期間の条件をそろえ、外部要因もメモしておきます。A/Bテストの設計は「ABテストとは?やり方・種類の違い」で解説しています。

PDCAのC:効果測定で成功と失敗を切り分ける

測定期間と見るべき数字

効果測定の期間は施策の種類で変わります。以下はあくまで目安です。

施策の種類計測開始の目安判断に必要な期間の目安
コピー変更・CTA変更即日2〜4週間
フォーム項目の変更即日2〜4週間
ページ構成の大幅変更即日4〜8週間
サイト構造の変更2〜4週間(SEOへの影響を含む)8〜12週間

見るべき数字は、改善仮説に直結する指標です。フォーム改善なら「フォーム到達数→完了数の通過率」、CTA改善なら「CTAのクリック率」、ファーストビュー改善なら「直帰率」と「スクロール深度」。サイト全体のCVRだけを見ていると、季節変動や広告出稿量の変化に振り回されます。指標の置き方は「KPI設計の基本」も参考になります。

失敗も記録する

効果が出なかった施策、逆効果だった施策も記録として残します。

「ボタンの色を変えたらCVRが下がった」という結果は、失敗ではなく資産です。次に同じ施策が提案されたとき、「以前試したときはこうだった」と根拠を示せます。

施策ログに残したい項目は次のとおりです。

  • 施策名と実施日
  • 改善仮説(なぜこの施策をやるのか)
  • 変更内容(スクリーンショットを含む)
  • 計測期間と比較条件
  • Before/Afterの数値
  • 判定(成功/失敗/判定不能)
  • 学び(次に活かせること)

ログが10件、20件と溜まると、「自社サイトでは何が効きやすいか」の傾向が見えてきます。

PDCAのA:次の改善サイクルにつなげる

成功した施策は横展開できないかを考えます。サービスAのページでCTA改善が効いたなら、サービスBやCのページでも同じ改善が有効な可能性があります。

失敗した施策は、仮説が間違っていたのか、仮説は正しいが施策が不十分だったのかを切り分けます。ここの切り分けが、次のサイクルの精度を左右します。そのうえで最初に作った課題リストとマトリクスに戻り、次に着手する施策を選びます。

月1回で回す運用スケジュール例

毎週PDCAを回し続けるのは、兼任担当者しかいないBtoB企業ではかなり大変です。現実的なのは、月1回の定例サイクルです。

時期やること
1週目前月施策の効果測定と結果のまとめ
1〜2週目データ確認、次の施策の仮説立案・優先順位づけ
2〜3週目施策の実装
4週目実装完了、計測開始

月1回でも年間12回の改善サイクルになります。よくある失敗は、最初に意気込んで週次サイクルを宣言し、数か月で息切れして改善活動そのものが止まることです。それより、月1回を淡々と続ける方が、結果的に知見が積み上がりやすいです。

効果が出やすい改善領域

全サイトに当てはまるわけではありませんが、着手の候補になりやすい領域があります。

1つ目はフォームです。BtoBサイトのフォームは、営業が後工程で欲しい情報(部署名、役職、従業員数、導入予定時期など)まで必須にしているケースが目立ちます。気持ちはわかりますが、ユーザーにとっては問い合わせのハードルが上がるだけです。必須項目を本当に必要なものに絞るだけでも、見直す価値は十分にあります。

2つ目はファーストビューのコピーです。テキストを変えるだけなので実装コストはほぼかかりません。「最先端の」「革新的な」といった抽象的な言葉が並んでいる場合、ターゲットの課題を具体的に言語化したコピーに差し替えると、読み進めてもらえる割合が変わることがあります。

3つ目はモバイル体験です。総務省の令和6年通信利用動向調査では、個人のスマートフォン保有割合は80.5%で、20〜59歳の各年齢階層では9割以上がインターネット利用機器としてスマートフォンを使っています。BtoB商材でも、最初の情報収集はスマホから始まる前提で導線を確認しておくのが望ましいです。

よくある質問

Webサイト改善は何から始めればよいですか?

最初は計測設定の点検です。キーイベント(CV)の設定、社内アクセスの除外、フォームが別ドメインの場合のクロスドメイン設定を確認し、数字が信頼できる状態にしてから現状把握に進みます。

改善の優先順位はどう決めればよいですか?

「影響を受けるトラフィック量×見込めるCVR改善幅」でインパクトを見積もり、実装難易度と掛け合わせて決めます。問い合わせ意欲の高いユーザーが集まるフォームや、アクセスの多いページのCTAは、優先度が高くなりやすい領域です。

アクセスが少なくてA/Bテストができない場合は?

期間を区切ったBefore/After比較で判断します。比較する期間の曜日構成や広告出稿量をそろえ、季節要因などの外部要因を記録しておくと、結果を解釈しやすくなります。

リニューアルと継続改善はどちらを優先すべきですか?

サイト構造やCMSに根本的な問題がない限り、まずは継続改善で課題を特定するのがおすすめです。リニューアルを検討する判断基準は「ホームページリニューアルのタイミングと進め方」で整理しています。

改善を続ける仕組みをつくる

サイト改善に一発逆転の施策はありません。データを見て、仮説を立て、施策を打ち、結果を測り、次に活かす。この繰り返しを毎月続けられるかどうかで成果が分かれます。

一番もったいないのは、「リニューアルしたから当分いいだろう」とサイトを放置してしまうことです。公開後の運用体制については「Webサイト保守・運用の重要性」も参考にしてください。

とはいえ、Webマーケティングの専任者がいない企業が、計測環境の整備から仮説立案、施策実行、効果測定まで自前で回し続けるのは大きな負荷です。本業の傍らでGAやヒートマップを毎月確認し、施策を設計して、制作側と調整する。兼任でこれを続けるのは、現実的には難しい面があります。

株式会社ティーラが提供するCVアップパートナーズでは、計測環境の整備から月次の分析・施策実行まで、サイト改善のPDCAを一気通貫で支援しています。丸ごとお任せいただくことも、社内担当者との併走も可能です。

サイト改善の進め方に課題を感じている方は、まずはCVアップパートナーズの無料サイト診断をご活用ください。


参考文献

  1. Microsoft「Microsoft Clarity」 https://clarity.microsoft.com/
  2. Google「PageSpeed Insights」 https://pagespeed.web.dev/
  3. web.dev「Largest Contentful Paint(LCP)」 https://web.dev/articles/lcp?hl=ja
  4. Google アナリティクス ヘルプ「データ保持」 https://support.google.com/analytics/answer/7667196?hl=ja
  5. 総務省「令和6年通信利用動向調査の結果」 https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/250530_1.pdf